シウタデリャ公園に忽然と現れる大規模な噴水
<143>シウタデリャ公園と1888年バルセロナ万博 でご紹介した、バルセロナに今も残るシウタデリャ公園。
この公園には「凱旋門」、建築家ドメネク・イ・ムンタネール(Lluís Domènech i Montaner、1850 – 1923)の「3匹のドラゴンの城(Castell dels Tres Dragons)」など、1888年バルセロナ万博の名残を今もみとめることができる。

1888年バルセロナ万博のために建てられた凱旋門
photo©️Kyushima Nobuaki

建築家ドメネク・イ・ムンタネールの「3匹のドラゴンの城」と呼ばれる建築物。
この建物は万博当時はカフェレストランとして使用された。
photo©️Kyushima Nobuaki
しかし、忘れてはいけないのはアントニ・ガウディ(1852~1926)が設計(をアシスト)した噴水である。
凱旋門を通ってシウタデリャ公園に入って左方面に行くと、突如大きな池が出現する。
これは「カスカーダ・モニュメンタル(Cascada Monumental)」と呼ばれる大噴水である。
この大噴水は1888年バルセロナ万博の際に建設された。

「カスカーダ・モニュメンタル(Cascada Monumental)」全貌
photo©️Kyushima Nobuaki
噴水の中央には「ヴィーナスの誕生」をテーマにした彫刻があり、上部にはギリシャ神話の「女神オーロラ」の黄金の像が輝いている。

「カスカーダ・モニュメンタル(Cascada Monumental)」
上に「女神オーロラ」、中部に「ヴィーナスの誕生」、手前左にドラゴンがみとめられる
photo©️Kyushima Nobuaki
「女神オーロラ」は「希望の光」、「知性や創造性の光」の象徴とされる、まさに万博にふさわしい女神である。
この「女神オーロラ」の像は公園内の離れたところからも光り輝いて見える。
いったいなんだろう、と思って近づくとこの大規模な「カスカーダ・モニュメンタル」にたどり着く。
また、下の方には4体のドラゴンが口から水を噴き出す仕組みになっている。

「カスカーダ・モニュメンタル(Cascada Monumental)」
手前に4体のドラゴンがみとめられる
photo©️Kyushima Nobuaki
この噴水の設計は建築家ジュゼップ・フォンセレー(Josep Fontserè)が担当したが、当時まだ学生だったアントニ・ガウディがフォンセレーの下で参加したということである。
4体のドラゴンなど一部の装飾に、ガウディのデザインの特徴が認められるといわれている。
筆者が訪れたのは朝早くだったので、残念ながら噴水は吹き出してはいなかったが、一目でただならぬ非凡な才能を感じることができる。
トランスジェンダー女性の殺人事件の現場
ちなみに、この噴水の左手手前にはとあるサインがたてられている。

大噴水の左手手前にたつソニア・レスカルボ・ザフラのサイン
photo©️Kyushima Nobuaki
それには次のように書かれている。
SONIA RESCALVO ZAFRA
CONCA 1956 – BARCELONA 1991
DONA TRANS
ASSASSINADA PER GRUP FEIXISTA
コンカ 1956 – バルセロナ 1991
トランスジェンダー女性がファシスト集団に暗殺された場所
このソニア・レスカルボ・ザフラはバルセロナで暮らしていたトランスジェンダー女性であり、ショーガールや舞台女優として活躍していた。
彼女は6人のネオナチ系スキンヘッドの若者グループに襲撃され死亡した。
この事件はトランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)による殺人事件としてLGBTQ+の人権運動に大きな影響を与えたという。
その事件の場所になったのがこの大噴水の近くだった、ということなのである。