<195>世界遺産「Royal Exhibition Building」とカールトン庭園

1880-81 Melbourne
現在の王立展示場の様子  photo©️Kyushima Nobuaki

メルボルンの建築家ジョセフ・リード

<190> より続く

アーティゾン美術館で開催中の「モネ展」についてご紹介していたので、少し開いてしまったが、今回からはまたオーストラリア編に戻っていきたい。

建築家ジョセフ・リード(Joseph Reed, 1823頃 – 1890)は、19世紀のメルボルンを象徴する「マーベラス・メルボルン(驚異のメルボルン)」時代の景観を形作った、オーストラリア史上最も重要で多才な建築家の一人と言われている。

<184>でご紹介した、あのヴィクトリア州立図書館も彼の設計によるものである。

現在の「ヴィクトリア州立図書館」(State Library Victoria)
photo©️Kyushima Nobuaki

彼は1853年にイギリスのコーンウォールからメルボルンに到着した。

そして直後にこの図書館の設計コンペで優勝し、オーストラリアで大活躍する建築家となったのである。

メルボルンの有名な「ヨーロッパのような美しい街並み」も彼の貢献によるところが大きいのである。

世界遺産「王立展示館(Royal Exhibition Building)」とカールトン庭園

そのジョセフ・リードが設計したのが、1880-81年メルボルン万博の主会場、王立展示館(Royal Exhibition Building)である。

現在のカールトン庭園、ホッホグルテル・ファウンテンと王立展示館
photo©️Kyushima Nobuaki

この建築物は、ビザンティン、ロマネスク、ロンバルディア、イタリア・ルネサンス様式が混ざり合った独特のデザインとなっている。

特に象徴的なドームは、イタリア・フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ブルネレスキのドーム)をモデルにしている。

メルボルン万博の王立展示館とカールトンガーデン の水彩画(Museum Victoria, 『Visions of Colonial Grandeur』より)

1880年メルボルン万博のカンタータ初演のために西側の身廊に座る招待客(Museum Victoria, 『Visions of Colonial Grandeur』より)

この王立展示館は、現在に至るまで、建設当時のまま、周囲のカールトン庭園とともに現存している。

現在のカールトン庭園の様子
photo©️Kyushima Nobuaki

現在のカールトン庭園の様子
photo©️Kyushima Nobuaki

そしてこの王立展示館は、19世紀万博のメイン展示館としては、唯一現存する貴重な建築物になっているのである。

王立展示館は、メルボルンで開催された第2回目の万博となる1888-89年メルボルン万博でもメイン会場として活用された。

そして、この王立展示館とカールトン庭園は2004年7月にユネスコ世界文化遺産に登録された。

これはオーストラリア初の世界文化遺産であった。

登録理由は、19世紀から20世紀初頭にかけて世界中に影響を与えた「国際博覧会運動」の、最も完成度が高く、かつ保存状態の良い例である、というものであった。

王立展示館の内部は、若いドイツ人芸術家で、少し前に移民してきたヨーゼフ・ホッホグルテル(Joseph Hochgurtel, 1851–1908)によって装飾がなされた。

ドームを支えるアーチ部分には「芸術 (Art)」「科学 (Science)」「農業 (Agriculture)」「工業 (Industry)」を象徴する女性像や図像が描かれた。

この王立展示館は、大変良好な状態で維持・保存され、今でも現役の展示会場として使用されているのである。

カールトン庭園の「万博噴水:ホッホグルテル・ファウンテン(Hochgurtel Fountain)」

ジョセフ・リードの設計にしたがって、造園家ウィリアム・サングスター(William Sangster, 1830–1910)が王立展示館周辺の庭園を手がけた。

王立展示館の前に「十分に育った木々」が植えられ、敷地が十分に確立されているように見せるために、成長した木が植えられた。

中央の花壇には、若いドイツ人芸術家で、少し前に移民してきたヨーゼフ・ホッホグルテル(Joseph Hochgurtel, 1851–1908)によって設計された噴水が設置された。

現在のホッホグルテル・ファウンテン
photo©️Kyushima Nobuaki

この高さ34フィート(10.4メートル)の噴水は、石と鉄の枠の上にポートランドセメントというやや異例な組み合わせで作られている。

その基部にある少年たちは、無邪気さと若さの純粋さを表し、第2層は産業、商業、科学、芸術の象徴で飾られ、最終層はオーストラリアの動植物の表現で装飾されている。

今見ても、美しい公園であり、素晴らしい噴水である。

特に、筆者が訪れた日は写真でおわかりのように青空に恵まれ、その美しさが際立っていた。

このように、万博の建築、装飾、庭園とそのすべてが揃った状態で現在まで残っているというのは奇跡的なことであろう。

それが世界遺産に登録された理由でもある。

王立展示館と、ホッホグルテル・ファウンテンを含むカールトン庭園は、万博開催から130年以上経った今も、その北側に立つ近代的なメルボルン博物館とともに市民の憩いの場となっているのである。

現在の王立展示場の北側とメルボルン博物館の様子 
photo©️Kyushima Nobuaki

王立展示場の北側にたつメルボルン博物館
photo©️Kyushima Nobuaki

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