<71> ニューヨーク・メトロポリタン美術館と万博⑤『センチュリー・ベース』

1876 Philadelphia Expo
『センチュリー・ベースと100周年記念台座』(上部部分) ユニオン ポーセリン ワークス カール・ミュラー "Century Vase and Centennial Pedestal" ( Upper Part) Union Porcelain Works Designed by Karl L. H. Müller photo©️Kyushima Nobuaki

<70>に引き続き、今回もニューヨーク・メトロポリタン美術館のアメリカン・ウィングに展示されている万博関連のアイテムをご紹介していきたい。
リビー(ニュー・イングランド・グラス・カンパニー)の他にも、1876年フィラデルフィア万博に出展していた会社があった。

「ユニオン・ポーセリン・ワークス」

その会社とは「ユニオン・ポーセリン・ワークス」という会社である。
ニュー・イングランド・グラス・カンパニーと違って、今は継承会社などとしても、もう存在していない。
ということもあり、この会社の作品はアンティーク市場で高値で売買されているらしい。

ウィキペディアによると、ユニオン・ポーセリン・ワークスは、アメリカ最初の、そして最も重要な磁器メーカーであった。 現在はニューヨーク州ブルックリンの一部になっているグリーンポイントに工場を設立し、いろいろな紆余曲折を経ながら、1862年から1922 年まで存在した。

フィラデルフィア万博の準備として、1874 年、彫刻家カール L. H. ミュラー (1820 年頃 – 1887 年) が同社のチーフ デザイナーとして採用された。 ミュラーは磁器作品の幅広いデザインを作成したが、特に注目すべきは フィラデルフィア万博で展示された『センチュリー・ベース(世紀の花瓶)』(”Century Vase”)だった。

ここメトロポリタン美術館のアメリカン・ウィングでは、その『センチュリー・ベース』も含め、「ユニオン・ポーセリン・ワークス」が1876年フィラデルフィア万博に出展していた作品を複数見ることができる。

『センチュリー・ベース(世紀の花瓶)』

1876年フィラデルフィア万博は、アメリカ独立100周年記念で開催された万博で、正式には英語で、”Centennial Exhibition of Arts, Manufactures and Products of the Soil and Mine”というもので、日本語に訳すとすると「芸術、製造品、そして土壌と鉱山の製品の 100 周年記念博覧会」とでもなるだろう。一般には”Centennial Exhibition”(100年博覧会)と呼ばれていた。

それで、100年(Centennial)や、100年=1世紀ということから「センチュリー(世紀)」(Century)とタイトルについた展示物が多数見受けられた。

そして、この「ユニオン・ポーセリン・ワークス」が出展したものにも、そういった名前がついている。

まず、このアメリカン・ウィングで目に入ってくるのが、『センチュリー・ベースと100周年記念台座』というものである。
これは、『センチュリー・ベース』という花瓶が台座の上に載っているものであり、写真でおわかりのように相当に大きな作品である。

『センチュリー・ベースと100周年記念台座』
ユニオン・ポーセリン・ワークス カール・ミュラー
“Century Vase and Centennial Pedestal”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『センチュリー・ベースと100周年記念台座』
ユニオン・ポーセリン・ワークス カール・ミュラー
“Century Vase and Centennial Pedestal”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『センチュリー・ベースと100周年記念台座』(上部部分)
ユニオン・ポーセリン・ワークス カール・ミュラー
“Century Vase and Centennial Pedestal” (
Upper Part)
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

この作品は上記、カール・ミュラーのデザインによる磁器である。
この作品の解説パネルには、下記のようにある。

カール L. H. ミュラー (ca. 1820-1887) によるデザイン
ニューヨーク州ブルックリン、1876年
磁器
世紀の花瓶は、1876 年にフィラデルフィアで開催された百周年博覧会のユニオン磁器工場ブースのためにドイツの彫刻家カール L. H. ミュラーによってデザインされたいくつかの大きな作品の 1 つです。ここでは、当初の意図どおり、同じく、ミュラーによってデザインされた磁器の台座に展示されています。
ジョージ・ワシントンの横顔が花瓶の表と裏に描かれ、バイソンの頭の取っ手が両側にあります。 ボストン茶会事件やウィリアム・ペンとレニ・レナペの協定など、アメリカの歴史の場面を描いた 6 枚のレリーフパネルが基地を取り囲んでいます。
未完成の花瓶には、他の例に見られるアメリカの産業の進歩を描いた場面が描かれていません。 台座に描かれた古典的な人物像はエレクトラの物語に言及しており、18 世紀後半のジョサイア・ウェッジウッドのジャスパーウェアからインスピレーションを得たものです。

この『センチュリー・ベース』であるが、ミュラーは少なくとも14のバージョンを制作した、ということであり、ここアメリカン・ウィングでは他のバージョンも見ることができる。

『センチュリー・ベース』ユニオン・ポーセリン・ワークス カール・ミュラー
“Century Vase” Union Porcelain Works Designed by Karl L.H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

その他、水差しやカップ、牡蠣用の皿なども展示されている。

1876年フィラデルフィア万博で展示された陶磁器
Ceramics at the Centennial Exhibition, 1876
photo©️Kyushima Nobuaki

1876年フィラデルフィア万博で展示された陶磁器
Ceramics at the Centennial Exhibition, 1876
photo©️Kyushima Nobuaki

『リバティ・カップと皿』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Liberty cup and saucer”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『マグカップ』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Mug”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『牡蠣用プレート』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Oyster Plate”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『水差し』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Pitcher”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『水差し』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Pitcher”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『水差し』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Pitcher”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

『水差し』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
“Pitcher”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
photo©️Kyushima Nobuaki

さらに、ティーセットも展示されているが、豪華な装飾が施されたこの作品には、ティーポットとシュガー・ボウルの先端に、アジア人と黒人男性の頭の形をした問題のある絵も描かれている。 こういった表現は 19 世紀のアメリカにおける人種差別思想の蔓延を明らかにしているといえるだろう。

『ティーセット』
ユニオン・ポーセリン・ワークス
カール・ミュラー デザイン
当時の人種差別的な表現が見て取れる
“Tea Set”
Union Porcelain Works
Designed by Karl L. H. Müller
You can see the racist expressions of the time.
photo©️Kyushima Nobuaki

 

また、「ユニオン・ポーセリン・ワークス」社によるもの以外の1876年フィラデルフィア万博出展作品も展示されている。
「オット・アンド・ブリューワー」(Ott and Brewer, 1871-1893)のアイザック・ブルーム(1835-1922)、「ニューヨーク・シティ・ポタリー」(1853-1888)の W. H. エッジなどの作品である。


『ユリシス・S・グラント将軍の胸像』
「ニューヨーク・シティ・ポタリー」(1853-1888)W. H. エッジ
“Bust of General Ulysses S. Grant”
New York City Pottery (1853-88) of James Carr (1820-1904)
Modeled by W. H. Edge
photo©️Kyushima Nobuaki

彼らは、古典、ネオ・グレック、エジプトのモチーフ、そして、 スエズ運河の開通、西方への拡張、移民などの時事問題、そして大衆文学やスポーツ、 そして在来の動植物といったいろいろなソースからインスピレーションを得て作品を作成したのである。

 

 

 

 

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