<115>万博の公式キャラクターのはじまり

1984 New Orleans
1984年ニューオリンズ万博の公式キャラクター「シーモア D. フェア」(Seymore D. Fair) photo by Ddj001 (CC BY-SA 4.0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:June_1984_Snap_Shot.jpg

2025年大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」

前回は、2025年大阪・関西万博のコンセプトストアを訪れた話について書いた。

その中心はやはり公式キャラクターのミャクミャクである。

ミャクミャク@2025大阪・関西万博コンセプトストア
photo©️Kyushima Nobuaki

博覧会協会のHPによると、このキャラクターのデザイン作者について次のような情報がある。

グループ名:mountain mountain(マウンテンマウンテン)
作者(代表者):山下 浩平(やました こうへい)
生年:1971年
職業:デザイナー・絵本作家

また、その決定については次のようにある。

本作品は、2021年11月1日(月)から12月1日(水)の間にご応募いただいた1,898作品の中から選ばれました。
当協会は、2022年3月2日(水)に、各選考過程を経て選ばれた最終候補作品3作品を発表しました。そして、同3月2日(水)から10日(木)まで実施した最終候補作品に対する意見募集には、40,704件のご意見をいただきました。本日(筆者注:2022年3月22日)の最終選考委員会では、皆様から寄せられた各最終候補作品へのご意見を参考にしながら選考を行い、最優秀作品を選出しました。

このように、公式キャラクターを決めるプロセスもなかなか大変である。
類似デザインがないかどうか、チェックも必要となる。

「愛・地球博」の公式キャラクター「モリゾー、キッコロ」

今から約20年前、2005年に開催された「愛・地球博」においては公式キャラクター「モリゾー、キッコロ」が人気だった。

筆者は当時このキャラクター選出についての業務に携わらせていただいた。
その時は数人(グループ)の候補アーティストをピックアップし、その中でコンペを行うという方式だった。

そして、ご存知のように、アランジアロンゾ「モリゾー、キッコロ」が選出されたのである。

万博のテーマ「自然の叡智」にふさわしい、しかも可愛いキャラクターで個人的にも好きなタッチだったので、いい仕事になった。

会期後、雪をかぶったモリゾー(右)とキッコロ  photo©️Kyushima Nobuaki

過去の日本開催の万博の公式キャラクター

では日本で開催された過去の万博ではどうだっただろうか。

1970年大阪万博では公式キャラクターは設定されていなかった。
(後述のように万博自体に公式キャラクターというものはなかった)

1975~76年沖縄海洋博では「オキちゃん」という公式キャラクターが設定された。
これはあの有名デザイナー亀倉雄策(1915-1997)デザインの、いるかをモチーフにしたものだった。

ウィキペディアによると次のようにある

オキちゃん(おきちゃん)は、1975年(昭和50年)に開催された沖縄国際海洋博覧会のマスコット。
モチーフはオキゴンドウないしバンドウイルカ。海洋博覧会のために捕獲・選抜された15匹のイルカがオキちゃんと命名され、会場内で行われたイルカショーに出演した。本キャラクターはこのイルカを擬人化したキャラクターである。また国営沖縄記念公園水族館(現:沖縄美ら海水族館)で飼育されているミナミバンドウイルカにもオキちゃんと名付けられている。
平面画のデザイナーは亀倉雄策。

しかし、ネットで調べてもなかなか亀倉雄策の平面画のビジュアルにたどりつかない。
本物のイルカの写真はでてくるものの、もう忘れ去られたのか。

筆者の所蔵する「公式長編記録映画 沖縄海洋博」というDVDにも使われていない。

そして、1985年つくば科学博では「コスモ星丸」だった。
これは愛知県在住の中学1年生の女子生徒の原案(1981年から1982年にかけて日本全国の小中学生からデザインが公募された)をイラストレーターの和田誠(1936-2019)がデザイン仕上げをしたものである。

1990年大阪花博では「花ずきんちゃん」だった。
この時もデザイン公募が行われ、応募総数9,603点の中から蔵前侑吏恵(くらまえゆりえ)さんの作品が選ばれ、審査委員長を務めた手塚治虫(1928-1989)が立体デザインを仕上げた。

そして2005年愛知万博では上記のようにアランジアロンゾの「モリゾー、キッコロ」ということになる。

1984年ニューオリンズ万博での公式キャラクターが万博初??

さて、この公式キャラクター(マスコット)も第1回目の万博である1851年ロンドン万博からあったわけではない。

BIE(博覧会国際事務局)のHPによると、最初に公式キャラクターが設定されたのは、20世紀後半、今からちょうど40年前にアメリカで開催された1984年ニューオリンズ万博のとき、ということになる。

1984年ニューオリンズ万博のところに次のようにある。

The 1984 New Orleans Expo was the first Expo to have its own mascot – Seymore D. Fair – a white pelican wearing a blue tuxedo.

(日本語訳)
1984 年のニューオーリンズ万博は、独自のマスコットを設けた最初の万博だった。
そのマスコットとは、青いタキシードを着た白いペリカンの「シーモア D. フェア」というものだった。

1984年ニューオリンズ万博の公式キャラクター「シーモア D. フェア」(Seymore D. Fair)
photo by Ddj001 (CC BY-SA 4.0)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:June_1984_Snap_Shot.jpg

筆者もこの情報に基づいて、拙著「万博100の物語」には1894年ニューオリンズ万博の「シーモア D. フェア」が万博史上初の公式マスコットであると記述した。

しかし、上記のように、すでに、それ以前の1975年沖縄海洋博において「オキちゃん」という公式キャラクターが設定されていた模様である。

どうもBIEの記述が間違っているようだ。
BIEですら、すべての万博の詳細までは把握しきれていないらしい。

上記のように、現在あまり情報がないのもその一因かもしれない。

ことほどさように、万博で「初めての」とか「最初の」という記述には注意を要するのである。

「オキちゃん」が万博初の公式キャラクターだったかどうかも、さらなる検証が必要である。
ただ、少なくとも、日本で開催された万博のなかでは最初、ということはいえるだろう。

「オキちゃん」という日本初の万博公式キャラクターが設定されてから、50年目に開催される2025年大阪・関西万博

ここにいたってここまで斬新な公式キャラクターになるとは50年前は想像もできなかっただろう。

しかし、そのミャクミャクも大人気らしく、喜ばしい限りである。
2025年大阪・関西万博で大いに活躍してもらいたいものである。

 

 

 

 

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