<56>『ピエタ』を展示したバチカン・パビリオン

1939/40 New York
1964年/65年ニューヨーク万博バチカンパビリオンの記念サイト Vatican Pavilion Memorial Site, 1964/65 New York World's Fair ©️Kyushima Nobuaki

バチカン・パビリオン記念サイトを発見!

<55>でご紹介したウェスティングハウス社のタイムカプセルの記念碑を堪能した筆者は、ニューヨーク州パビリオンを左後ろに見ながら東南のほうに進んだ。

このユニスフィアのある公園敷地から南に進むとロングアイランド高速道路(Long Island Express Way)があり、そこにかかる橋を渡ると、この公園の南の敷地へと行ける。

公園の北と南にかかる橋
Bridge spanning the north and south of the park
©️Kyushima Nobuaki

橋の上からロングアイランド高速道路を望む
View of the Long Island Expressway from the bridge
©️Kyushima Nobuaki

この南の敷地も万博の会場だった。

この南の敷地はメドー湖(Meadow Lake)がその大部分を占め、そのさらに南にはウィロー湖(Willow Lake)がある。

メドー湖の風景。遠くにニューヨーク州パビリオンが見える
Meadow Lake scenery. The New York State Pavilion can be seen in the distance.
©️Kyushima Nobuaki

メドー湖の風景
Scenery of Meadow Lake
©️Kyushima Nobuaki

メドー湖の東側にはTASCA(The American Small Craft Association)のボートハウスがある。

このTASCAというNPOはセーリングとボートの安全性の教育に特化した組織であるが、この建物は、1939年に開催されたニューヨーク万博のフロリダ州パビリオンがあったところに建っているのである。

ボートハウスのサイン
Sign of Boathouse
©️Kyushima Nobuaki

現在のボートハウスの建物
Current Boathouse Building
©️Kyushima Nobuaki

筆者はそちらのほうに向かおうと、ウェスティングハウスのタイムカプセルの記念碑から橋の方へ歩いて行った。

すると、橋の手前の左の方に、なにか記念碑みたいなものを発見した。

近寄ってみると、なんと、こここそが、1964年/65年ニューヨーク万博の時の「バチカン・パビリオン」の跡地だったのだ。

1964年/65年ニューヨーク万博バチカンパビリオンの記念サイト
Vatican Pavilion Memorial Site, 1964/65 New York World’s Fair
©️Kyushima Nobuaki

万博当時、大人気だった「バチカン・パビリオン」

「バチカン・パビリオン」は、当時、金色の屋根のチャペルが上部に設置された、優美な楕円形のパビリオンだった。

このパビリオンは大人気であった。この万博では、ただゼネラル・モータースの「フューチャラマ」だけが、この「バチカン・パビリオン」よりも多くの入場者を集めたのである。

ミケランジェロの『ピエタ』

 そして何より、このパビリオンには1499年以来、バチカンから動くことのなかったミケランジェロ作の門外不出の作品『ピエタ』が出展されていたのであった。

この『ピエタ』は万博開催前年の1963年7月2日、当時の大統領ケネディローマ法王パウロ6世にトップ交渉して出展してもらったものであるが、ケネディ本人は万博開幕の5カ月前に暗殺されてしまい、この展示を見ることはなかった。

歴史上初めてのローマ法王のアメリカ訪問

 そして、1965年10月4日にはローマ法王パウロ6世がこの万博を訪れた。

彼は国連への歴史的な訪問の間にこのパビリオンでミケランジェロの『ピエタ』の展示を見たのである。

この時の米国訪問が、ローマ法王が歴史上初めてアメリカを訪れた記念すべき旅であった。

1964年と1965年の2つの会期の間は、この貴重な『ピエタ』は、バチカンには帰らず、厳重に警備された保護ケージの中に鍵をかけられてしかるべきところに大事に保存されていたのである。

「バチカン・パビリオン」記念サイトに刻まれている言葉

さて、この記念サイトであるが、直径5メートル〜7メートルくらいの丸い円盤上の3層の床の上に、丸みを帯びたベンチ状の記念碑があり、その背もたれともいえる部分に、文字が刻まれている。

1964年/65年ニューヨーク万博バチカンパビリオンの記念サイト
Vatican Pavilion Memorial Site, 1964/65 New York World’s Fair
©️Kyushima Nobuaki

床面には円の中に十字架が描かれており、その周りには

SITE OF THE VATICAN PAVILION
NEW YORK WORLDS FAIR 1964-1965

という文字が刻まれている。

バチカンパビリオン記念サイトの床面
Floor of the Vatican Pavilion Memorial Site
©️Kyushima Nobuaki

それでは記念碑には何と刻まれているだろうか。

これは3面のパネルからなる言葉であるが、まず、正面のパネルには次のように刻まれている。

THIS THE SITE OF THE VATICAN PAVILION WAS

AUTHORIZED BY POPE JOHN XXIII

VISITED ON OCTOBER 4 1965 BY

POPE PAUL VI

DURING HIS MISSSION OF PEACE TO

THE UNITED NATIONS

THE BUILDING EXHIBITED MICHELANGELO’S PIETA AND

OTHER ART TREASURES – IT SYMBOLIZED THE BROTHERHOOD

OF MAN THE SPIRIT OF ECUMENISM AND THE THEME

OF THE NEW YORK WORLDS FAIR 1964・1965

・PEACE THROUGH UNDERSTANDING・

バチカンパビリオン記念サイトの刻印
Engraving of the Vatican Pavilion Memorial Site
©️Kyushima Nobuaki

バチカンパビリオン記念サイトの刻印(近景)
Engraving of the Vatican Pavilion Memorial Site (close view)
©️Kyushima Nobuaki

訳すと、次のようになろう。

このバチカン・パビリオンの跡地は、

法王ヨハネ23世が認可し、

国連への平和ミッションの間に

1965 年 10 月 4 日、

法王パウロ6世によって訪問された

このパビリオンにはミケランジェロのピエタと

その他の芸術の宝の数々が展示された

これらは–人類の同胞愛、エキュメニズムの精神、そして

1964/1965年ニューヨーク万博のテーマ「理解を通じた平和」

を象徴するものであった。

この「エキュメニズム」というのはキリスト教の普遍的統一を目指す運動のことである。

そして左側のパネルには次のような文字が刻まれている。

THE VATICAN PAVILION

FRANCIS CARDINAL SPELLMAN

PRESIDENT

MOST REVEREND BRYAN J McENTEGART

VICE PRESIDENT

*

バチカンパビリオン記念サイトの刻印(近景、左側)
Engraving of the Vatican Pavilion Memorial Site (close view, left)
©️Kyushima Nobuaki

これはバチカン・パビリオンの館長と副館長の名前を記したものだろう。

そして右側には次のようにある。

THE VATICAN PAVILION

WAS DEDICATED ON APRIL 19 1964

バチカンパビリオン記念サイトの刻印(近景、右側)
Engraving of the Vatican Pavilion commemorative site (close view, right side)
©️Kyushima Nobuaki

これは訳すと

バチカン・パビリオン

1964 年 4 月 19 日に奉献されました

となり、このパビリオンが1964年の4月19日に完成したことを記している。

ちなみにニューヨーク万博の1964年の会期は4月22日から10月18日までなので、オープンの3日前に完成した、ということだろう。

約60年前である。

東京ではオリンピックが開催された年だ。

万博史上に燦然と輝くニューヨーク万博、そしてこのバチカン・パビリオン。

今回は早朝に訪れたこともあり周囲には誰もいなく、「ひっそりと佇んでいる」といった表現がふさわしいこのバチカン・パビリオン記念サイト。

その前で目をつぶって静かに60年前に想いを馳せれば、万博開催中にここを訪れた膨大な数の人々(その多くはすでに故人であろう)による喧騒が今も聞こえてくるような気がしてくるのであった。

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