<176>バカラショップのアール・デコ展

1925 Paris Expo
シャンデリア「シェドー(噴水)」 ジョルジュ・シュヴァリエ 1925アール・デコ博出展作品 photo©️Kyushima Nobuaki

バカラショップ 丸の内 で開催中の「バカラとアール・デコ」展

<175>でご紹介した三菱一号館美術館で開催中の「アール・デコとモード」展を見た筆者は、近くの「バカラショップ 丸の内」で開催中の

バカラとアール・デコ  
1925年パリアール・デコ博覧会から100年

という展示を見に行くことにした。

開催期間は2025年8月29日(金)〜10月22日(水)。

バカラとアール・デコ展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

ご案内状には次のようにある。

1925年、パリで開催された「近代装飾芸術・産業美術国際博覧会」(通称アール・デコ博覧会)において、バカラは「噴水」をテーマに壮麗なパヴィリオンを展開し、クリスタルの水が湧き上がるかのようなシャンデリアで人々を魅了しました。このたび、その歴史的博覧会から100年の時を経て、当時の名品をフランス・バカラミュージアムより厳選し、バカラショップ 丸の内にて特別展示いたします。現代のバカラへと受け継がれる、モダニティの原点を映す逸品の数々をご高覧ください。

バカラの万博出展の歴史

バカラは、パリで開催された最初の万博である1855年パリ万博の時から、万博に積極的に出展してきたブランドである。

バカラはこの1855年パリ万博では、天然水晶製の2つのシャンデリアなど、全部で953点にもおよぶガラス作品を出展しグランプリを獲得した。

バカラの出展の中には「ローハン」のシリーズも含まれていたが、その「ローハン」は、今もバカラショップで買い求めることができる。

その後、1867年パリ万博でもグランプリを獲得するなど、万博に継続的に出展し、高い評価を受けてきた。

1925年アール・デコ博ではクリストフル社との共同パビリオンを出展

そして、この1925年パリ万博(アール・デコ博)では、やはり1855年パリ万博から万博への出展を繰り返してきたクリストフル社とともに共同パビリオンを展開したのである。

今回は1925年パリ万博(アール・デコ博)当時の名品を特別展示しているという。

これは楽しみである。

丸の内のバカラショップの奥の方に今回の展示のコーナーがある。

バカラとアール・デコ展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

「噴水」というテーマ

まず目に飛び込んでくるのは、豪華なシャンデリアである。

シャンデリア「シェドー(噴水)」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1925アール・デコ博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

これは、シャンデリア「シェドー(噴水)」という作品である。
ジョルジュ・シュヴァリエ作、とある。

ジョルジュ・シュヴァリエ(Georges Chevalier、1894-1987)は、バカラの偉大なデザイナーとして知られている。

シュヴァリエは1916年、22歳でバカラに加わり、1970年代まで同社のクリエイティブに深く関わった人物である。

彼はバカラの伝統的なクリスタル製品に、アール・デコ様式に見られるような、幾何学性を取り入れたモダンで洗練されたデザインを導入し、「現代性の息吹」を与えたと評されている。

そしてこの1925年アール・デコ博では、クリストフル社との共同パビリオンである「クリストフル・バカラ・パヴィリオン」の内外装を担当し、「噴水」というテーマでその設計を行なったのである。

1925年アール・デコ博
「クリストフル・バカラ・パヴィリオン」
photo©️Kyushima Nobuaki

なので、このシャンデリアが

シャンデリア「シェドー(噴水)」

という名なのもうなづける。

まさに湧き上がる噴水の形にみえる豪華絢爛な作品である。
この作品は高さ1.4mであり、7020ものクリスタルピースから構成されているという。

1925アール・デコ博バカラカタログより
シャンデリア「シェドー(噴水)」の展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

このシャンデリア「シェドー(噴水)」のほかにも1925年アール・デコ博での出展作品がいくつか展示されている。

バカラとアール・デコ 
展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

ルフレ・グラフィック クープ
1925アール・デコ博出展作品を2023年に復刻
photo©️Kyushima Nobuaki

グラス「シェドー(噴水)」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1925アール・デコ博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

グラスセット「フロレアル」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1925アール・デコ博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

花瓶「ポピー」
ジョルジュ・デュネイム
1925アール・デコ博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

花瓶「no.36 bis」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1925アール・デコ博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

いずれもアール・デコ様式の美しい作品である。

また、映像では1925年アール・デコ博でのバカラのカタログも紹介されていた。
これは非常に貴重な資料であり、今回展示されている作品も載っていたりしてなかなか興味深い。

1925アール・デコ博バカラカタログ
表紙
photo©️Kyushima Nobuaki

1925アール・デコ博バカラカタログより
右ページ上にグラスセット「フロレアル」が認められる
photo©️Kyushima Nobuaki

1925アール・デコ博バカラカタログより
右ページ左下に花瓶「no.36 bis」が認められる
photo©️Kyushima Nobuaki

1937年パリ万博出展作品も

また、ピカソゲルニカを出展したことで有名な1937年パリ万博時に出展された作品もいくつか展示されている。

ボウル「スクウェア」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1937年パリ万博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

グラスセット「スクウェア」
ジョルジュ・シュヴァリエ
1937年パリ万博出展作品
photo©️Kyushima Nobuaki

この頃になるとさらにデザインがモダンなものになっているのがわかる。

フランスのバカラ・ミュージアムから厳選された万博出展の作品群を東京で見ることができるというのは大変貴重な機会であるといえよう。

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