<75>ニューヨーク・メトロポリタン美術館と万博⑧エラールのピアノ

1851 London Expo
エラールのピアノ Grand Piano by Érard photo©️Kyushima Nobuaki

<74>でご紹介したメトロポリタン美術館の楽器展示セクションであるが、さらに行くと、ピアノが展示されている。

エラールのピアノ

もしかしたら、と思って確認すると、やはりエラールのピアノであった。

ピアノで有名なエラール社を創設したセバスチャン・エラール(1752-1831)はフランス・ストラスブールに生まれた。
パリに出てチェンバロを制作していたが、その後ピアノ制作を始め、その後エラール社を設立する。

ロンドン万博でベルリオーズに賞賛されたエラールのピアノ

そして、エラール社のピアノは1851年世界初の万博であるロンドン万博に出展されたのである。
<74>で触れたように、そのロンドン万博ではベルリオーズに賞賛されたという記録がある。

メトロポリタン美術館に展示されているエラール

エラール社はもう存在していない。
他社との合併、ドイツの会社から買収されるなどして、結局今にその名を残すことはなかった。

しかし、エラール社のピアノはまだ存在している。
このメトロポリタン美術館にも2台の展示が確認できた。

一台は非常に装飾が凝っている印象である。

エラールのピアノ
Grand Piano by Érard
photo©️Kyushima Nobuaki

エラールのピアノ
Grand Piano by Érard
photo©️Kyushima Nobuaki

解説によると次のようにある。


グランドピアノ
ジョージ・ヘンリー・ブレイク、デザイナー、エラール(フランス人、1780年頃~1959年)、製造者 イギリス、ロンドン、1840年頃
サテンウッドのベニヤ、オーク、マザーオブパール、金属、塗料、金メッキ、象牙、黒檀 ヘンリー・マクスウィーニー夫人寄贈、1959年(59.76)
キダーミンスター男爵トーマス・ヘンリー・フォーリーのために作られたこのピアノの寄木細工のサテンウッドケースには、音楽のトロフィー、ロココのグロテスクな装飾、神話の場面が描かれている。独立した金メッキのスタンドにはダイアナ、バッカス、アポロ、ヴィーナスの仮面が飾られ、アポロは下の担架に竪琴を持って横たわっている。このピアノには1821年のエラールのダブルエスケープメント機構が採用されており、これにより単音を素早く繰り返すことができる。

エラールのピアノ
バックに飾られている絵は『オルガンのリハーサル』(ヘンリー・ロルール作)
Grand Piano by Érard
The painting on the back is “The Organ Rehearsal” by Henry Lerolle
photo©️Kyushima Nobuaki

ちなみに、バックに飾られている絵はヘンリー・ロルール(パリ生まれ、1848-1929)という画家の描いた『オルガンのリハーサル』という作品である。

そして、もう一台。
こちらは『白鳥の死』というタイトルのついたグランドピアノである。

エラールのピアノ『白鳥の死』
Grand Piano “La Mort du Cygne” (The Death of the Swan) by Érard
photo©️Kyushima Nobuaki

photo©️Kyushima Nobuaki

こちらは、作品解説には次のようにある。


『白鳥の死』
グランドピアノ
楽器:エラールら、パリ、フランス
ケースデザイン:ルイ・マジョレル(1859-1926)とヴィクトール・プルーヴェ(1858-1943)、ナンシー、フランス
1903年
マホガニー、彫刻、果樹のベニア板、象牙、金箔ブロンズ イヴェット&アレン・ミカーン(L 202244.1.2)
精巧に装飾された家具の中に楽器を収めたアートケースピアノは非常に珍しい。このような楽器は、ナンシーのチャールズ&マリー・コービン・メイソン邸用に作られたこの例のように、個人宅のインテリアデザインに合わせて作られることが多い。
この例は、ピアノの曲面の寄木細工で描かれた瀕死の白鳥をテーマにした、ほぼ同一のピアノ3台のうちの1台である。このデザインは、フランスのアール・ヌーボー家具の最も重要なデザイナー 2 人のコラボレーションである。
ピアノはフランスの大手メーカーであるエラールのものである。19 世紀には、ベートーベン、ショパン、リスト、ベルリオーズなど多くのアーティストのために楽器を製作した。
20 世紀に入ると、彼らの楽器は保守的になり、高級市場向けに非常に装飾的なピアノに特化した。

ベートーベン、ショパン、リスト、そしてベルリオーズなど我々も知る音楽家もこのエラールのピアノを弾いていたということである。

迎賓館赤坂離宮に存在するエラールのピアノ

そして、日本にもエラール社のピアノを見ることができる場所がある。
それは、東京赤坂にある迎賓館赤坂離宮である。
そのピアノは「羽衣の間」に展示されており、大変美しいピアノである。

内閣府のHPによると、エラールピアノ演奏会の案内のページに次のようにある。


◆迎賓館赤坂離宮のエラールピアノ◆
演奏会で使用するのは、明治39年(1906年)に製造されたエラール社製のグランドピアノです。通常、ピアノの鍵盤は88鍵ですが、このピアノは90鍵ある珍しいものです。また、特別な装飾が施されており、皇室を表す菊の御紋も描かれています。
迎賓館赤坂離宮は、明治42年(1909年)に東宮御所として建設されました。エラールピアノは、東宮御所の造営時、「羽衣の間」に置くために購入されました。
後の昭和天皇が大正12年(1923年)から約5年間、後の香淳皇后との新婚時代を含めて当館にお住まいになられた際、香淳皇后がこのピアノを演奏されました。また、戦後このピアノが皇居に置かれた際には、皇室の方々も演奏されました。
その後、昭和49年(1974年)、5年余りの改修工事を経て、当館が国の迎賓施設である迎賓館赤坂離宮となった際に、このピアノも皇居から移管され、以来当館で保有してきたものです。

ちなみに、この案内は、今年(2024年)6月6日、13日、20日のためのもので、このように定期的にエラールピアノ演奏会というものが、ここ迎賓館赤坂離宮開催されており、その音色も聴くことができる。
ロンドン万博に出展されたゆかりあるエラール社の作品の音を楽しめる貴重な機会といえよう。

また、この「羽衣の間」には、この迎賓館で最も大きいシャンデリアが飾られている。これは7,000ほどのパーツからなり、重さはおよそ800kgということである。
そして、このシャンデリアには万博出展の常連だったバカラ社のクリスタルグラスも使われているのである。

さて、ずっと続けてきたニューヨーク編もいったんこの<75>話で終了することとしたい。
1週間ほどの滞在だったが、古いものから新しいものまで、美術館に所蔵されているものから、大規模な公園や建築物にいたるまで、やはりニューヨークには万博に関連しているものが多い。
また、機会があれば訪れて、さらなる探求をしてみたいと思っている。

 

 

 

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