<74>ニューヨーク・メトロポリタン美術館と万博⑦サックス

1851 London Expo
メトロポリタン美術館に展示されているサックス Saxophone on display at the Metropolitan Museum of Art photo©️Kyushima Nobuaki

メトロポリタン美術館の楽器展示

さて、これまで見てきたメトロポリタン美術館の「アメリカン・ウィング」を出ると、近くには楽器展示コーナーがある。
そこには世界中から集められた様々な時代の楽器が展示されている。

サックスの展示

まず筆者の目をひいたのは、サックス(サクソフォーン)の展示であった。

メトロポリタン美術館に展示されているサックス
Saxophone on display at the Metropolitan Museum of Art
photo©️Kyushima Nobuaki

このアルト・サックスの解説には次のようにある。


11. アルト・サックス
アドルフ・サックス (ベルギー、ディナン 1814-1894 パリ)
フランス、パリ、1​​855
真鍮と革
購入、ロバート・アロンゾ・レーマン遺贈、2005 年
(2005.82.1)
サックスが 1846 年に特許を取得したとき、管楽器には力強い低音がなかった。サックスはこの不足を補うためにこの楽器を発明した。オーケストラの作曲家には採用されることはなかったが、サックスの存命中はバンド楽器として成功を収めた。皮肉なことに、サックスが発明されてからずっと後まで存在しなかった 2 つのジャンル、ジャズとポップスを通じて、サックスは世界的に人気を博すことになった。

アドルフ・サックス

アドルフ・サックス(1814~1894)は、ベルギーのディナン生まれの楽器製作者であった。25歳のときにパリに移り、一連の吹奏楽器群を作ったことで名を馳せた。
その後サクソフォーンを発明して、1846年、パリで特許を取る。サクソフォーンは真鍮などの金属で作られるが、発音体の特質から木管楽器の仲間とされ、甘く豊かで艶のある音色と機敏な運動性があって、木管楽器とも金管楽器とも相性が良かった。

サックスはロンドン万博、パリ万博で受賞

実はこのサックス、という楽器は1851年ロンドン万博に出展され、プライズ・メダルを受賞している。

このことは、イギリスでのブラスバンドブームのきっかけともなった。
また、サックスは、1855年パリ万博にも改良したサックスを出品し、グランプリを受賞したのである。

ロンドン万博楽器部門の審査員だったベルリオーズ

この時の賞の審査員には、フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズ(1803~1869)が入っていた。

ベルリオーズは、1830年、標題音楽の嚆矢とされる『幻想交響曲』を発表し、1851年にはフランスだけではなく、ドイツやロシアでも活躍する国際的な作曲家として、すでに大変な名声を得ていた。
なので、万博の審査員に選ばれても不思議はなかったのである。

楽器部門の審査員はイギリスから5名、ドイツ関税同盟から2名、オーストリア、フランス、アメリカから各1名という構成で、フランスからの1名というのがベルリオーズであった。

記録によると、ベルリオーズは次話<75>でご紹介する「エラールのピアノ」と並んでサックスを高く評価していたことが伺えるのである。

 

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