抽象彫刻家・造形作家多田美波の展覧会
現在、東京・木場の東京都現代美術館で
という展覧会が開催中である。
会期は2026年8月29日-12月6日。

東京都現代美術館入り口付近
photo©️Kyushima Nobuaki
展覧会ホームページによると、下記のような説明がある。
多田の作品は、帝国ホテル東京ランデブーラウンジの光壁『黎明』やロビーに設置された光造形『Golden Rose』、リーガロイヤルホテル大阪の光造形『瑞雲』など、我々の身近な建築でも見かけることができるものである。
今回の展覧会は、光造形の作品に加え、アクリルやステンレスの鏡の効果のある未来的なデザインの作品も多く展示されており、半世紀前にこのような作品を世に出してきた多田の才能には驚くばかりである。

多田美波展 サイン
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
photo©️Kyushima Nobuaki
1970年大阪万博と多田美波
今回の展覧会の作家年表の1970年のところには、次のようにある。
「万国博美術展ー調和の発見ー」大阪万博、彫刻『エピサイクルNo.2』
“Expo Fine Arts Exhibition : Discovery of Harmony,” Expo ’70 Site
(Osaka), Sculpture, Epicycle No.2
ということで、1970年大阪万博で『エピサイクルNo.2』という作品を展示したことがわかる。
今回の展覧会で探してみると、『エピサイクルNo.3』(1980)という作品は見つかったが、『エピサイクルNo.2』は見つからなかった。
『エピサイクルNo.3』はアクリルとステンレスを使って1980年に作成された作品である。
ステンレスの四角い台の上に、ドーナツを半分にしたようなアクリルの造形がのっている。
それが周囲の風景も取り込んで完全なドーナツの透明な物体が存在しているように見える。
不思議な作品である。

多田美波展 展示風景
手前左が『エピサイクルNo.3』(1980)
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
手前右が『エピサイクルNo.3』(1980)
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
手前が『エピサイクルNo.3』(1980)
photo©️Kyushima Nobuaki

多田美波展 展示風景
手前が『エピサイクルNo.3』(1980)
photo©️Kyushima Nobuaki
『エピサイクルNo.2』を尋ねて
では1970年大阪万博で展示された『エピサイクルNo.2』はどんな形をしていたのだろうか。
『エピサイクルNo.3』がこのような作品であれば、1970年大阪万博に出展された『エピサイクルNo.2』も同じような感じの作品だったのだろうか。
なかなかネットでもすぐにはたどり着けない。
筆者の持つ、1970年大阪万博の「万国博美術展」のカタログで調べてみると、たしかに

1970万国博美術展図録表紙
photo©️Kyushima Nobuaki
という記述がある。(P251)
これは、セクションV 「現代の躍動」のカタログNo.100、という意味である。
しかし、画像は載っていない。
そこで、いろいろと調べてみると、
公益財団法人石橋財団 アーティゾン美術館研究紀要
という資料にたどり着いた。
この資料のP28から「多田美波『エピサイクル』について」という内海潤也氏の論文にたどり着いた。
P28には『エピサイクル』(1868)の写真が、そして、P37には『エピサイクルNo.2』の写真が載っている。
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多田美波『エピサイクル』(1868)の写真
ARTIZON MUSEUM Bulletin 2023 P28より
石橋財団アーティゾン美術館

『エピサイクルNo.2』(1970)の写真
ARTIZON MUSEUM Bulletin 2023より
多田美波『エピサイクル No.2』1970年、展示風写真、
以下より再掲載
「美術手帖」第330号、1970年7月号増刊、130頁
キャプションには
「美術手帖」第330号、1970年7月号増刊、130頁
とある。
やっと、『エピサイクル No.2』にたどりついた。
この論文、そして写真から、この作品は、
鏡面状の大きく緩やかな凹凸を持つ造形
水面に5個を浮かべる形で配置
中央部の大きさがそれぞれ異なる
屋外展示のため透明なカバーが付いていた
という構成だったようである。
つまり、通常の「彫刻1個」というより、水面を使った環境的な作品だったと考える。
そして、現時点でその存在を確認できる資料は確認できないらしい。
そして1970年大阪万博での展示後について、1972年の第3回神戸須磨離宮公園現代彫刻展にも同様の形式で出品されたことまでは確認できているが、その後の行方は不明、ということらしい。
1970年大阪万博リコー館での展示
ちなみに、多田美波は同じ1970年大阪万博のリコー館にも参画している。
今回の展示の
というパネルには、
写真提供:多田美波研究所
という写真が示されている。

「環境芸術」の時代 パネルより
『天の眼』展示風景(大阪万博リコー館)
写真提供:多田美波研究所
パビリオンの上に設置された、パビリオンと同じさくらいのサイズの巨大な気球に「眼」が設置されている。黒目の部分がステンレスと思われる鏡の効果のある物体で制作されているようだ。
帝国ホテル東京に行ってみる
多田美波の作品は今も身近にある。
早速、久しぶりに帝国ホテル東京に行ってみた。
ここには
ロビーに設置された光造形『Golden Rose』(2001)
宴会場「光の間」の天井の光造形『彩雲』 (2008)
があるはずである。
まず、帝国ホテル東京に入ると、ロビーほぼ正面のいつも設置されている豪華な花の上部に、光造形『Golden Rose』が確認できる。
非常に豪華、かつ煌びやかである。
『Golden Rose』(金の薔薇)、ということで下部のフラワー・アレンジメントと対比しているのだろうか。
後ろの階段と相まって、贅沢な空間を演出している。

帝国ホテル東京のロビーに設置された多田美波作品
光造形『Golden Rose』(2001)
photo©️Kyushima Nobuaki

帝国ホテル東京のロビーに設置された多田美波作品(上)
光造形『Golden Rose』(2001)
photo©️Kyushima Nobuaki
そして、その横の本館1階のランデブーラウンジに行ってみる。
このラウンジの大壁面は、『黎明』というタイトルのついた、1970年大阪万博と同じ年に設置された多田美波の作品なのである。
圧倒的な大きさでありながら、作品自体を主張しすぎない、ラウンジの環境に適したデザインであると感じる。
また、完成から半世紀以上経った今は、歴史を感じさせる存在であるともいえる。

帝国ホテル東京に設置された多田美波作品
ランデブーラウンジの光壁『黎明』(1970)
photo©️Kyushima Nobuaki

帝国ホテル東京に設置された多田美波作品
ランデブーラウンジの光壁『黎明』(1970)
photo©️Kyushima Nobuaki

帝国ホテル東京に設置された多田美波作品
ランデブーラウンジの光壁『黎明』(1970)(部分)
photo©️Kyushima Nobuaki
今回、宴会場「光の間」は使用中で、残念ながら、天井の光造形『彩雲』 (2008)の撮影はできなかった。
ちなみに、今、ランデブーラウンジでは
東京都現代美術館タイアップカクテル「Aube d’Or~黄金の夜明け~」が提供されている。
とのことで、提供期間は2026年9月1日〜12月6日、料金は2,800円ということである。

東京都現代美術館タイアップカクテル
「Aube d’Or~黄金の夜明け~」 のサイン
photo©️Kyushima Nobuaki
早速飲んでみた。
シャンパンベースのカクテルで美しい。
見た目以上に強めのカクテルであった。

東京都現代美術館タイアップカクテル
「Aube d’Or~黄金の夜明け~」
photo©️Kyushima Nobuaki

東京都現代美術館タイアップカクテル
「Aube d’Or~黄金の夜明け~」
photo©️Kyushima Nobuaki
また、帝国ホテルショップ「ガルガンチュワ」ではとらや特製羊羹「黎明」も提供されている。
とある。これも提供期間は2026年9月1日〜12月6日で、料金は4,320円ということである。

とらや特製羊羹「黎明」
photo©️Kyushima Nobuaki

とらや特製羊羹「黎明」
photo©️Kyushima Nobuaki
多田美波の作品は、現在にも脈々と、カクテルや羊羹にまで受け継がれているのである。

